第74回研究例会
第74回研究例会「口承文芸と文学 —泉鏡花・井上ひさしの口承世界—」が、3月31日に江東区芭蕉記念館1階 会議室で開催されます。
下記のように、日本口承文芸学会・第74回研究例会を開催いたします。ご多忙な時期ですが、万障お繰り合わせのうえ、ぜひご参加くださいますようお願いいたします。
日時: 2018年3月31日(土)14:00~17:00
場所: 江東区芭蕉記念館1階 会議室
内容:
今回の研究例会では、小説家で劇作家でもある泉鏡花と、井上ひさしの作品世界を通して、口承文芸と文学との関係を考えて見たいと思います。具体的には、小説家と口承文芸の語り手、それぞれの作品創造の源泉となっている伝承説話の共通性や、作家の人生体験が、物語の創作活動とどう関わるのか、作家論と語り手論を横断するような議論をしたいと考えています。
多くの会員のご出席をお願いいたします。
初めに趣旨説明を司会者から述べ、パネリストには50分ずつご発言をいただきます。
その後、10分ほど休憩をはさみ、参加者との討論を深めたいと思います。
口承文芸や、泉鏡花、井上ひさしに関心のある会員以外の方のご参加も歓迎します。
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パネリスト
伊藤高雄氏 「泉鏡花と口承文芸 —俗談・巷説の世界からの創造—」
根岸英之氏 「〈異化〉する語り手としての井上ひさし
—「藪原検校」「花石物語」「父と暮せば」から—」
進行・司会
小堀光夫氏
パネリスト発言要旨
「泉鏡花と口承文芸 —俗談・巷説の世界からの創造—」 伊藤高雄
泉鏡花の作品の謎のような魅力・怪しさはどこから来るのか。民俗の旅をしていると、折りにふれ鏡花の紡ぎ出す文学世界との奇妙な暗合を経験することがある。柳田國男や折口信夫が鏡花文学の大の信奉者だったことは周知のことだが、それは民俗学という方法が近代の日本の中に発見しようとした一つの理想形が鏡花の作品の中に結晶化しているからであろう。
本発表では、民俗の旅と鏡花作品との関わりから初めて、柳田・折口の言説を媒介に、豊かな俗談・巷説の世界に生きることの創造的意味について考察してみたい。
参考文献:拙稿「子産石から淡島様へ」「春昼、うららかな季節に」『汀』No27、No28 平成26年3、4月、「泉鏡花座談会」『文藝春秋』昭和2年8月
「〈異化〉する語り手としての井上ひさし
—「藪原検校」「花石物語」「父と暮せば」から—」 根岸英之
山形県出身で仙台、釜石などで青少年期を過ごした作家・劇作家の井上ひさしは、東北地方での昔話を聴く体験を持ち、黄表紙作者にあこがれ自らを「戯作者」になぞらえて、多くの作品を創作してきた。
本発表では、戯曲「藪原検校」、自伝的小説「花石物語」、戯曲「父と暮せば」を「口承文芸」との関わりで読み解くことにより、井上ひさしを〈異化〉する語り手として捉え、〈口承/文芸〉研究のあり方を展望したい。
参考文献:拙稿「井上ひさし 東北への眼差し」日本民話の会『聴く語る創る21 東日本大震災を語り継ぐ』2013年