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『講座日本の伝承文学』全十巻

編集代表 福田晃・渡邊昭五

伝承文学研究会会員が中心となって編まれた「伝承文学研究の大系」。一九九四年の第1巻の刊行を皮切りに、二〇〇四年第10巻の終刊まで、十年の歳月をもって完結した。

ここにいう伝承文芸とは「狭義では現代にまで及んだ「口承文芸」を言い、広義では創造的「文学」に沈潜する「口承表現」をも含んだものとみる」(福田晃「「伝承文学」とは何か」第1巻巻頭論文)とある通り、口承文芸研究と重なる領域を指している。

そのあらましは以下の通り。

  1. 伝承文学とは何か一九九四
    福田晃・渡邊昭五編
  2. 韻文文学〈歌〉の世界一九九五
    真鍋昌弘・上岡勇司・真下厚編
  3. 散文文学〈物語〉の世界一九九五
    美濃部重克・服部幸造編
  4. 散文文学〈説話〉の世界一九九六
    江本裕・徳田和夫・高橋伸幸編
  5. 宗教伝承の世界一九九八
    福田晃・美濃部重克・村上学編
  6. 芸能伝承の世界一九九九
    天野文雄・須田悦生・渡邊昭五編
  7. 在地伝承の世界〔東日本〕一九九九
    錦仁・菊地仁・徳田和夫編
  8. 在地伝承の世界〔西日本〕二〇〇〇
    岩瀬博・福田晃・渡邊昭五編
  9. 口頭伝承〈トナエ・ウタ・コトワザ〉の世界二〇〇三
    福田晃・真鍋昌弘・常光徹編
  10. 口頭伝承〈ヨミ・カタリ・ハナシ〉の世界二〇〇四
    福田晃・岩瀬博・花部英雄編

執筆者は一三九名、論文数は二〇六篇に及ぶ内容であり、どの巻をとっても、口承文芸研究と無関係ではないが、とりわけ「口頭伝承」を冠した9・10巻の内容を紹介する。

9巻

「総論」福田晃、「古代の呪言」真下厚、「修験道と呪い」宮本袈裟男、「呪言と呪縛」山下欣一、「女性と唱え言」中島恵子、「呪歌の生成」花部英雄、「呪歌をめぐる説話と信仰」野本寛一、「葛城修験の秘歌」下仲一功、「死者供養の呪歌」小田和弘、「酒宴と歌謡」真鍋昌弘、「田歌・田歌本の伝承」田中螢一、「伝承歌謡の享受」森山弘毅、「東北の掛唄」宮崎隆、「風流踊り歌」佐々木聖佳、「田植え歌の受容と伝承」長野隆之、「奄美の歌掛け」酒井正子、「中国の少数民族の歌垣」手塚恵子、「古代のこと・わざ」田中文雄、「ことわざの由来」鈴木棠三、「諺の仕組み」武田勝昭、「ことわざの伝承と働き」山田厳子、「昔話・世間話と諺」米屋陽一、「諺と俗信」常光徹。

10巻

「総論」福田晃、「フルコトと『古事記』」藤井貞和、「唱導の経釈とヨミ」藤井佐美、「民間巫女の」川島祭文秀一、「地神妄僧の釈文」西岡陽子、「八重山のユングトゥと種子島のロッポー」狩俣恵一、「韓国の本解」金賛會、「古代のカタリゴト」藤井貞和、「中世のカタリモノ」岩瀬博、「近世の語り物」小林幸夫、「浪花節の「盛衰」と「新作」」真鍋昌賢、「中国・樂亭太鼓」井口淳子、「英雄伝説の行方」三浦佑之、「貴族文芸と世間話」石井正己、「鳥獣草木の譚の中世」徳田和夫、「説教と咄」堤邦彦、「民俗信仰と民間説話」小池淳一、「生活と民間説話」花部英雄、「湯治する小野小町」小堀光夫、「乗り物のうわさ話」常光徹、「昔話の日中比較」郭富光。

(三弥井書店/1巻本体四三八一円~10巻本体六八〇〇円)

2007/1/22 掲載 : 根岸英之