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『日本のグリム 佐々木喜善』

遠野市立博物館編

二〇〇三年の遠野市立博物館による『佐々木喜善全集』完結と併せ、本書の刊行により佐々木喜善研究の基礎資料が揃ったことになる。石井正己「日本のグリム佐々木喜善」は喜善の方法とその業績、没後の評価と研究の到達点を整理する。資料として「系図」「佐々木喜善年譜」、石井「佐々木喜善研究文献目録」「佐々木喜善書誌」が付された。

佐々木喜善研究は、柳田の方法論を中心に据えた演繹的な研究史観からは成り立たない。喜善を「先駆的」と捉え「先見性」を見出したところに出発点がある。

また「優れた採集は研究を抜きには成り立たない」という指摘を踏まえれば、今後これが喜善固有の問題となるのではなく、採集と記述(編集)の方法から新たに口承文芸研究の対象になるものもあるだろう。語り手の高齢化の問題と同様、資料に地方出版や私家版が多いだけにその収集も急務である。

本書は遠野市立博物館第四九回特別展に際して作成されたものである。

(遠野市立博物館/二〇〇〇円)

2007/1/22 掲載 : 多比羅 拓