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『昔話と村の暮らし』

―山形県最上郡旧萩野村―
大友義助 監修
渡部豊子 編著

萩野村(現新庄市萩野)に生まれ、語り手として山形県内外で活動を続ける渡部豊子氏が、六百頁をこえる著作を送り出す。「日々の暮らしと昔話」「昔話」「萩野村のこと」の三部からなる。

家のこと、行事、村の出来事のさまざまについて、両親や叔父、叔母、姉弟に問いかけ、語り合う。そのやりとりをテープからおこすのにたいし、昔話は、安食才兵衛の家を出自とする祖母(加藤クニ氏)に聴いた「むがす」をふくめて、何度も聴いて「我が身につけて」きたからこそ「できるだけ聞いたままに」思いおこしながらの綴りを実践する。身につけた昔話をどう文字へとうつすか、考え始める糸口を、渡部氏のこころみに見出せる。

家族でそれぞれに昔話をよせ合ってみると、「みんなの話、合わねぇやなあ」となる「昔話談義」で、本書をしめくくる。身ぢかく生きてきた人たちとの「談議」をかさねるうちに、「私の生まれ育ちと昔話」をたしかめ、編み上げていく過程を味わいたい。

(自刊/〒九九六-〇〇〇一山形県新庄市五日町一三八九-一四・渡部/三〇〇〇円)

2007/1/22 掲載 : 藤久真菜