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『大学生の伝承する現代伝説』

―世間話の話型設定のための民俗学資料として―
三原幸久・豊島和子 編著

本書は、大学生への「教室での一斉調査」で「採集」された筆記資料八千余話より編まれた「現代伝説集」である。調査期間は一九八五年から二〇〇三年の18年間に亘る。

その膨大な話から「世間話として確立していると編者が考える話型」の代表的な話が数話ずつ選別され、類話とともにA~Rの18のカテゴリに排列されている。

しかしその排列やカテゴライズは、「話型としてまだ確立していないと思われる多くの類話」を「その他」として収載した結果、「その他」の分量が他を圧倒してしまうなど、時に無理を感じさせる。それは、世間話研究において「話型」や「類型」とは何を意味するのか、という議論の不在から来る弱点であるだろう。
まずは、世間話に話型を設定することは、研究にどのような進展をもたらすのか、という根源的な議論からの出発が必要なはずである。本書は議論を開くための布石として口承文芸研究に投じられた、貴重な一石といえる。

(問い合せ・関西外国語大学豊島研究室)

2007/1/22 掲載 : 飯倉義之