第81回研究例会
「シンポジウム:東日本大震災から11年 ―震災をめぐる現場の声と研究者―」
2022年3月20日(日)に Zoom で開催されます
下記のように、日本口承文芸学会・第81回研究例会を開催いたします。万障お繰り合わせのうえ、ぜひご参加くださいますようお願いいたします。
○日時:2022年3月20日(日)14時~17時
○ZOOM(ズーム)によるオンライン形式(パソコンやスマートフォンでインターネットに接続するオンライン会議形式)で行います。
☆招待URLは、こちらの「会員限定ページ」に記載してあります。
※日本口承文芸学会員には「会員限定ページ」に入るためのユーザー名とパスワードを郵送済みです。内容:
〇パネリストと発言テーマ
石井正己氏(東京学芸大学教授)
「庄司アイさんの遺志を継ぐ」
葉山 茂氏(弘前大学准教授)
「物語ることと身体的経験―気仙沼の被災資料整理の現場から」
内山大介氏(福島県立博物館)
「震災をめぐるモノと物語の継承―博物館学芸員と東日本大震災―」
北村規子氏(日本民話の会会員)
「津浪と木」
進行・司会
山田栄克氏(神田女学園中学高等学校教諭)
○パネリスト発言要旨
庄司アイさんの遺志を継ぐ 石井正己
今もなお新型コロナウイルス感染症が終息せず、すっかり遠ざかってしまった感じがする東日本大震災を改めて呼び戻してみたい。その際に口承文芸という観点から取り上げねばならないのは、昨年亡くなった宮城県亘理郡山元町のやまもと民話の会の庄司アイさんの活動であろう。厳しい避難生活の中で編集・発行した『小さな町を呑みこんだ巨大津波』3冊(やまもと民話の会、2011~12年)がなぜ生まれたのか。そして、やまもと民話の会発足20周年に実施した催しなどを記録した『復興と民話』(三弥井書店、2019年)に何を託したのか。さらには、緊急事態宣言の中で刊行した『改訂増補 民話』(やまもと民話の会、2020年)はどんな改訂増補だったのか。10年にわたる活動のそばで見て感じたのは、民話の力で復興を支えるという強い意思だった。アイさんが後世に託した思いを考えることは、私たちの口承文芸研究に新たな視野を拓くのではないか。そんなことをお話ししたい。
物語ることと身体的経験―気仙沼の被災資料整理の現場から 葉山 茂
東北地方太平洋沖地震のあと、報告者は国立歴史民俗博物館(歴博)の一員として宮城県気仙沼市の尾形家住宅の家財を収集し、住宅の所有者や気仙沼市民とともに保全してきた。また、その過程を映像に記録し、研究映像「モノ語る人びと―津波被災地・気仙沼から」(2018年)を制作した。映像制作を通じて意識したのは、語りが生じる場所の物質性や身体である。
尾形家の家財を整理するなかで、活動に参加した人びとは自分が手にとった家財に関連して各々の経験を語ってきた。物質は人びとが自らの経験を言語化するきっかけになるようである。現在の気仙沼は災害復旧工事により土地改変が進み、震災前の地域の姿は消えつつある。またガレキ撤去により、災害前に暮らしを支えていた物質の多くも失われた。そのようななかでなぜ被災地で物質を残す必要があるのかを、人びとが物質を手にとって語り出す行為に注目して考えてみたい。
震災をめぐるモノと物語の継承―博物館学芸員と東日本大震災― 内山大介
東北地方太平洋沖地震による大津波は東北の沿岸部に甚大な被害をもたらした。さらに東京電力福島第一原子力発電所の事故で拡散した放射性物質の汚染により、住民が帰ることのできない地域が生まれた。こうした状況を受け、福島県では土地の歴史を物語る被災した文化財と震災によって生まれた出来事を伝える震災資料という、ふたつの資料保全活動が地域の学芸員を中心に展開している。
文化財レスキューでは避難区域に置き去りにされた博物館資料のほか、寺社や個人蔵資料の救出が進められ、今日では祭礼や芸能などの無形の文化財と共に被災した暮らしと地域を支えるよりどころとして継承活動が行われている。一方、震災によって生まれたモノや変えられたモノなどを我々は「震災遺産」と呼び、その保全に取り組んできた。震災をめぐる経験の風化、あるいは多様な記憶の同質化が進むなかで、モノを起点に無数の小さな物語を絶えず醸成していくことを目指している。
津浪と木 北村規子
震災後、本やネットを使って震災で語られた話を集める中で、不思議に木の話がひっかかった。ある時は防災の視点で語られる「緑の防波堤」としての木。ある時は生き残った「陸前高田の一本松」に寄せられる思い。「東アジア民話データベース」(東アジア民話データベース作成委員会)で津波の話を検索した時、沖縄の八重山白保では「津波の時木に引っかかって助かった」「子どもを木に縛り付けて助けた」という話が多いことに気が付いた。なぜ津波から200年以上は経っているのに、木に助けられた話が何話も伝承されているのか疑問に思った。木には暮らしに結び付いた伝承の数々があるのは確かだが、海辺の生活ならではの、木に特別な思いを抱く可能性が考えられる。では、海辺の暮らしの中でどのように木は捉えられていたのか。また、震災後盛んに行われている植樹についても、そこにどんな心意があるのか考えてみたい。
〇参加方法
以下の①または②により招待URLの情報を入手して、ZOOMで参加してください。
①「会員限定ページ」に記載の “招待URL” をクリックしてください。
「会員限定ページ」のユーザー名とパスワードは、事務局から郵送した資料(研究例会案内)に記載してあります。
②学会事務局のメールアドレスに招待URLを返信するよう依頼のメールを送ってください。
ただ、個別対応のため時間がかかりますので、できるだけ①の方法でご参加ください。
※パネリストの用意した資料は当日ZOOM経由でダウンロードしてください。
※非会員の方にこのシンポジウムを周知なさる際、「会員限定ページ」のユーザー名・パスワードについては伝えずに、「会員限定ページ」にてご自分が入手した「ZOOMの招待URL、ミーティングID、パスコード」のみを通知して参加してもらってください。非会員の方々が直接学会事務局にメールを送信されると、上記したように時間がかかり、開催時間に間に合わないこともありますので、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。ただし、各自が非会員を研究例会に招待する場合、通知したい人のみにメールで招待URLを送信し、不特定多数がアクセスできるようなホームページやブログなどに貼り付けることは絶対にしないでください。
※ZOOMでスムーズな視聴をするためには、ZOOMアプリのインストールを推奨します。既にインストール済みの方も、セキュリティ向上のため最新版に更新してください。また、ZOOMを利用して研究例会に接続する際に発生する通信料は個人負担です。Wi-Fi(ワイファイ)や通信量制限がない契約以外で接続していますと、通信料が発生したり、パケット(データ通信量)を大きく消費しますのでご注意ください。
以上