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第71回研究例会

第71回研究例会「現在の学校教育における「伝統文化」教育の位相を問う―教科書教材・授業実践の事例などを通して―」が、12月3日に関西福祉科学大学で開催されます。

下記のように、日本口承文芸学会・第71回研究例会を開催いたします。ご多忙な時期ですが、万障お繰り合わせのうえ、ぜひご参加くださいますようお願いいたします。

 

日時: 2016年12月3日(土)13:301700
場所: 関西福祉科学大学 大学2号館605講義室

 

内容:

 口承文芸研究は人の口から耳へと伝わることばを第一に重んじて考察してきた。ネットロアの隆盛するいまここにあっても、口と耳とを全く用いない口承文芸研究は考えにくい。もっとも、今、口と耳と記したけれども、口も耳も「人の」を冠して考える必要がある。人と人との関係を閑却し得ない。口承は社会の中に生きられる。口承にまつわる研究もまた同様だろう。
 社会の中に生きられる口承文芸という場合、かつては村落社会や民俗社会ということばを中心にして「社会」をイメージしていただろう。だけれども、近代や現代の社会は、もう少し範囲を違えているように思われる。たとえば、「日本の教育」を一括りの対象と捉えて、それと口承文芸との関係を考えてみるなど、試みてもよいのではないか。
 それというのも、2006(平成18)年12月に「改正」された教育基本法は、口承文芸と学校教育との関係を考えるとき、看過し得ない問題を提起してくるからである。
変わった教育基本法では、第2条「教育の目的」の第5項において、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」と定められた。
 一つの大きな法が変化すると、次々と連鎖して法や制度が改まる玉突き現象を引き起こす。教育基本法変化の翌年には学校教育法が同様に変化し、その翌2008(平成20)年には学習指導要領が変化した。たとえば、変わった『小学校学習指導要領』の国語科では、教育内容が従来の3領域(「A話すこと・聞くこと」「B書くこと」「C読むこと」に加えて、新たにABCを通して「〔伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項〕」を指導することが求められた。具体的にその要領を繙くと、小学校第一・第二学年では「(ア)昔話や神話・伝承などの本や文章の読み聞かせを聞いたり、発表し合ったりすること」を指導することが求められている。かくして、変わった学習指導要領に基づいて教科用図書(教科書)の教材が変わっていく(高木史人「小学校国語・昔話教材の指導法へ 覚書」(『人文科学論集』92号、名古屋経済大学人文科学研究会、2013年参照)。
問題は、いくつかある。一つには「伝統」ということばで括られる何ものかである。伝統という語の出自とその社会的背景が探られるべきだし、そのいまここでの使われ方も考察されるべきだろう。あるいは、一つには従来の口承文芸研究が蓄積してきた研究成果が教科用図書にどの程度反映しているかの斟酌と、もし反映していない場合にはその原因の究明と共に、研究者としての対応のあり方などが検討されるべきだろう。あるいは、いまここに実際に力を持って動いている制度的現実と研究している我々との関係の結び方を考えるべきだろう。あるいは、……。問題は、いまここに動いている事態を見据えつつ、多岐にわたる、複雑な様相を呈していよう。一度に結論を出せそうにないけれど、口承文芸や口承文芸研究のいまここを考える契機として、学校教育における教科書教材や授業実践の問題を取り上げる。                                                       
(文責:高木史人)

発表者:  

平成18年度改正教育基本法に掲げられた教育目標「伝統文化」と教科書教材の推移

                     髙木史人(関西福祉科学大学)

小学校国語教科書における中国昔話について

                     立石展大 (高千穂大学)

小学校国語教科書におけるヨーロッパ昔話について

                     久保華誉(外国民話研究会日本民話の会)

二宮金次郎の説話と道徳教育

                     伊藤利明(関西福祉科学大学)

「伝統文化」と学校教育の実践  ──新潟県村上市の場合──

                     矢野敬一(静岡大学)

コメント:                蔦尾和宏(岡山大学)

                     生野金三(関西福祉科学大学)

司会:                  高木史人

 

会場案内図

関西福祉科学大学アクセス

 

                                          

2016/2/7 掲載 : 例会委員会