第83回研究例会
「シンポジウム:危機のフォークロアと〈口承〉文化」
2023年3月18日(土)に Zoom で開催されます
下記のように、日本口承文芸学会・第83回研究例会を開催いたします。万障お繰り合わせのうえ、ぜひご参加くださいますようお願いいたします。
○日時:2023年3月18日(土)14時~17時
○ZOOM(ズーム)によるオンライン形式(パソコンやスマートフォンでインターネットに接続するオンライン会議形式)で行います。
☆招待URLは、こちらの「会員限定ページ」に記載してあります。
※日本口承文芸学会員には「会員限定ページ」に入るためのユーザー名とパスワードを郵送済みです。
内容:
〇シンポジストと発言テーマ
野村敬子氏(昔話研究家)
「口語られる飢饉 ―山形県真室川町の場合―」
川島秀一氏(東北大学災害文化研究所シニア研究員)
「漁労の危機に立ち向かう人びと」
重信幸彦氏(國學院大學兼任講師)
「危機と美談」
司会・コーディネーター
山田嚴子氏(弘前大学教授)
○シンポジスト発言要旨
口語られる飢饉 ―山形県真室川町の場合― 野村敬子
昨夜松谷みよ子さんの夢を見た。平成二年に私が書いた「昭和九年飢饉(ケガチ)の年」を読まれ、ご自身も当地で飢饉の語り聴きたいと採訪を試みたが「他郷の人には」と厳しく拒まれたという。久しぶりにそれを記した「女性と経験」を読んで思い出した在郷意識の生ま生ましさであった。日本を代表する児童文学者の松谷さんにしても叶わなかった民俗の壁であった。その地を郷里としている私にしても、それを記したことで「飢饉と一揆は書いてはならぬ」と大層お叱りを頂いた。遠い昔に秋田や村山藩の飢饉と一揆を書いて刑死した人がいたそうだと叱責を受けた。馬場文耕であろうか。まさか宝暦年間のことをと思ったが、当地差首鍋(さすなべ)地区の飢饉を語る「凶作話」は三百年以上も続いている女性の語り文化であるという。年頭の女性講には必ず「大火・流行病・飢饉」を語る。それは民間巫女を呼んでの神・仏オロシと同じ女性専有の世界、即ち聖なる伝承空間である。聖なるが故に口語られると説かれている。聖なるとは何か。
漁労の危機に立ち向かう人びと 川島秀一
漁業に携わる人びとの危機はさまざまである。海難事故などの自然災害は、その極地であろうが、その最中でも作法として伝承されていることがある。船のミヨシ(舳)にロープで体をしばりつけることなどは、東日本大震災で被災した船でも見受けられた。一方では、原発事故後における「試験操業」を強いられる管理漁業などの人災的な危機もある。それらの危機は日常的に伝えられてきた船の慣習やユイコ(結い)などの慣例などにより、最善の方向へと乗り越えようとするのだが、はたして、それらは研究者が語るような「民俗知」や「在来知」と呼べるような「知」なのだろうか。むしろ、からだが記憶するような伝承であろう。また、非常時に日常の伝承が支えるというだけでなく、逆に非常時の出来事から日常に浸透することになった伝承もあることだろう。これらのことについて深く再検討をしておきたい。
危機と美談 重信幸彦
「美談」とは、時代のなかで積極的な意味付けに値する人のふるまいに関する、近代歴史学が管理する歴史叙述とは異なる、御話による歴史叙述の名称である。特に災害や戦争などは、美談が収集される機会となった。今回は、関東大震災において編纂された美談集と、最近、自治体史の一冊として編纂された、報告者自身が関わった聞き書き集を併置して検討する。前者は215話を収めた東京府編・発行『大正震災美績』(1924)、後者は約147話を収めた『新修福岡市史特別編 福の民 暮らしのなかに技がある』(2010)である。前者については、「美績」をめぐる噂などの調査にあたった17名の調査員の活動に焦点化し、「美談」が具体化される過程を検討する。一方『福の民』は、決して「美談集」を目指したものではない。しかし変動著しい都市のなかで生きる人々の選択や判断、工夫そして知恵を称賛をこめて語る態度は、限りなく美談に近い言説を構築している可能性があることを検討する。
〇参加方法
以下の①または②により招待URLの情報を入手して、ZOOMで参加してください。
①「会員限定ページ」に記載の “招待URL” をクリックしてください。
「会員限定ページ」のユーザー名とパスワードは、事務局から郵送した資料(研究例会案内)に記載してあります。
②学会事務局のメールアドレスに招待URLを返信するよう依頼のメールを送ってください。
ただ、個別対応のため時間がかかりますので、できるだけ①の方法でご参加ください。
※パネリストの用意した資料は当日ZOOM経由でダウンロードしてください。
※非会員の方にこのシンポジウムを周知なさる際、「会員限定ページ」のユーザー名・パスワードについては伝えずに、「会員限定ページ」にてご自分が入手した「ZOOMの招待URL、ミーティングID、パスコード」のみを通知して参加してもらってください。非会員の方々が直接学会事務局にメールを送信されると、上記したように時間がかかり、開催時間に間に合わないこともありますので、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。ただし、各自が非会員を研究例会に招待する場合、通知したい人のみにメールで招待URLを送信し、不特定多数がアクセスできるようなホームページやブログなどに貼り付けることは絶対にしないでください。
※ZOOMでスムーズな視聴をするためには、ZOOMアプリのインストールを推奨します。既にインストール済みの方も、セキュリティ向上のため最新版に更新してください。また、ZOOMを利用して研究例会に接続する際に発生する通信料は個人負担です。Wi-Fi(ワイファイ)や通信量制限がない契約以外で接続していますと、通信料が発生したり、パケット(データ通信量)を大きく消費しますのでご注意ください。