『昔話の保存と活用に関する総合的研究』
平成15年度~平成16年度科学研究費補助金(基盤研究(C)(2))研究成果報告書
研究代表者 石井正己
研究代表者 石井正己
長い題名の書物だけれど、読み応えもある。その多くは、石井正己の著作だが、遠野の「語り部」の翻字資料や石井とその他の人々との対談・座談も収録されている。百部の刊行だと書いてあるから、市場にはあまり流通しないだろうが、おそらく石井の後に出る著書などに収録されてくるのだろう。一読して、民謡を保存し活用する動きの一つとしてある「よさこいソーラン」運動の昔話版になるか、ならないか。「遠野」はそういう運動のメッカなんだろうと感じた。その中の運動の精神的支えが石井であることに異議がない。私は耳に痛い、口に苦いことばを通じて社会に訴えかける研究者だとじしんを位置づけているが、石井のことばは、(相対的に)ソフトで甘い。そこに石井の立ち位置の独自性がある。私にとって、遠野は口承の異端に思えるから近寄らないが、石井にはそこは口承文芸のど真ん中に映っているだろう。それでいいのである。みんなが同じでは詰まらない。研究(・者)には、幅があったほうがよい。
(非売品)
2007/1/22 掲載 : 高木史人