第87回研究例会
「叙事詩研究の現在と可能性」が2025年3月22日(土)に Zoom で開催されます
下記のように、日本口承文芸学会・第87回研究例会を開催いたします。万障お繰り合わせのうえ、ぜひご参加くださいますようお願いいたします。
○日時:2025年3月22日(土)14時00分~17時00分
○ZOOM(ズーム)によるオンライン形式(パソコンやスマートフォンでインターネットに接続するオンライン会議形式)で行います。
☆招待URLは、こちらの「会員限定ページ」に記載してあります。
※日本口承文芸学会員には「会員限定ページ」に入るためのユーザー名とパスワードを郵送済みです。
内容:
〇 登壇者
パ ネ リ ス ト : 丹菊逸治、藤井真湖、坂井弘紀 (敬称略、報告順)
司会&コメンテーター: 熊野谷葉子
〇 次第
14:00-14:10 「はじめに ― 叙事詩と叙事詩研究を考える」熊野谷葉子
14:10-14:50 丹菊逸治「アイヌ叙事詩の形式的制約」
14:50-15:30 藤井真湖「『元朝秘史』における英雄叙事詩的意味構造と聴覚的意匠
― 婚姻交渉に隠された毒のメッセージ」
(休憩)
15:40 - 16:20 坂井弘紀「『チョラ=バトゥル』にみる英雄叙事詩の変容と評価
・再評価」
16:20 - 17:00 ディスカッション(パネリスト×フロア×コメンテーター)
〇 発表概要
「はじめに ― 叙事詩と叙事詩研究を考える」
熊野谷葉子
口承文芸としての「叙事詩」とは何か。A.Lordの名著のタイトル"The Singer of Tales"を想起するなら「歌われる物語」か。だがその内容や人物像、節や演奏法は民族により地域により相当に多様で括りがたい。またこれらを記録し受容し解釈してきた経緯も結果も当然多様である。世界にはかくも多様な、しかし「叙事詩」としか呼びようのない口承文芸が広く分布し、それが我々の興味をかきたててやまない。本シンポジウムでは、アイヌ、モンゴル、カザフの叙事詩の第一線の研究者によって、いま叙事詩はどう読めるのか、叙事詩は何を語るのか、その研究の切り口が語られる。
「アイヌ叙事詩の形式的制約」
丹菊逸治
アイヌ叙事詩の「韻文形式」は明確に厳格な形式ではないが少なくとも過去百年以上安定している。また、少なくとも近代初期以降記録された作品では物語構造・登場人物・定型句に共通性が見られる。物語構成は複数のエピソードの連鎖形式だが、化物退治・他の英雄たちとの戦闘・求婚譚など内容にはおそらく有限のパターンがあり、無限に連鎖を続けられるようなものではない。これら文体・内容の制約を前提として語り手が独自の演出を加えて語る。それにより、歴史的伝承とは異なる歴史性、謎解きを重要視する散文説話とは異なる演出がみられることになる。また「語りの名手」が名手として記憶に残り、語り手自身による筆録が残されているのもこれらの形式的制約ゆえであろう。
「『元朝秘史』における英雄叙事詩的意味構造と聴覚的意匠―婚姻交渉に隠された毒のメッセージ」
藤井真湖
『元朝秘史』は、チンギス・カンの事績を中心に記した文献であり、その語りの構造には、明示的な内容とは正反対の意味を持つ二重の意味構造が認められる。これはモンゴル英雄叙事詩に顕著な特徴であり、当該書においても確認できる。本発表では、この二重の意味構造を具体的に示す例として、チンギス・カンの父イェスゲイが息子の婚姻交渉を行う場面を取り上げる。この交渉では、一見通常のやり取りが行われているように見えるが、花嫁の父デイ・セチェンの言葉には隠された「毒のメッセージ」が込められていた可能性がある。本発表では、このエピソードを通じて『元朝秘史』における二重の意味構造の特徴を分析し、さらにその中に見られる聴覚的意匠について考察する。
「『チョラ=バトゥル』にみる英雄叙事詩の変容と評価・再評価」
坂井弘紀
中央ユーラシアのテュルク系民族に伝わる英雄叙事詩『チョラ=バトゥル』は、16世紀のロシアによるカザン侵略とそれにともなうカザン=ハン国滅亡を描いた叙事詩として知られている。この叙事詩はカザン=タタールやクリミア=タタール、ノガイやカザフ、カラカルパクなどに伝えられるがその内容は必ずしも同一ではない。本報告では、『チョラ=バトゥル』を例に、英雄叙事詩のヴァリアントはどのように生まれるか、それらにどのような相違があるかを取りあげながら、人々が叙事詩で何を伝えようとしてきたかを確認する。またソビエト時代のこの叙事詩にたいする扱いやその後の再評価から、叙事詩がもつ力や役割を考えてみたい。
〇 参加方法
以下の①または②により招待URLの情報を入手して、ZOOMで参加してください。
①「会員限定ページ」に記載の “招待URL” をクリックしてください。
「会員限定ページ」のユーザー名とパスワードは、事務局から郵送した資料(研究例会案内)に記載してあります。
②学会事務局のメールアドレスに招待URLを返信するよう依頼メールを送ってください。
ただ、個別対応のため時間がかかりますので、できるだけ①の方法でご参加ください。
※非会員をこの研究例会に招待する場合、その方個人に「招待URL」だけを伝え、「会員限定ページ」のユーザー名やパスワードは絶対に伝えないでください。また不特定多数がアクセスできるようなホームページやブログ、SNSなどに「招待URL」を流すことは絶対にしないでください。
※パネリストの用意した資料は当日ZOOM経由でダウンロードしてください。
※ZOOMでスムーズな視聴をするためには、ZOOMアプリのインストールを推奨します。既にインストール済みの方も、セキュリティ向上のため最新版に更新してください。また、ZOOMを利用して研究例会に接続する際に発生する通信料は個人負担です。Wi-Fi(ワイファイ)や通信量制限がない契約以外で接続していますと、通信料が発生したり、パケット(データ通信量)を大きく消費しますのでご注意ください。